すす払い〜家庭を営む心の大掃除〜

一年間にたまった家のほこりを払い、きれいにしてお正月を迎えようというのが『すす払い』の行事、今でいう大掃除です。お正月準備のいちばんはじめに行うのが習わしとなっています。

 

お正月に年神様をお迎えするためには、門松を飾ったり、お餅をついたり、さまざまな準備が必要です。その準備を始めるのが『正月事始めの日』といい、旧暦十二月十三日は、宣明暦二十八宿の鬼宿というおめでたい日にあたっていました。そのため江戸時代には、この日にみんなですすを払い、門松の松やお正月に使う薪などを山へ取りに行くのが習わしだったそうです。しかし最近は、お正月よりもクリスマスの準備で大忙し。園芸屋さんにも、松ではなくて、もみの木やポインセチアが並んでいます。

そんなわけでお正月の準備は、いよいよ年末も押し迫ってから。

さて大掃除、まずは天井や壁、電気のかさ、仏壇など、はたきを入れることからはじめましょう。はたき終わったら、便利な掃除機もいいけど、ほうきで集めてみると、探していた大切なものが見つかったりすることもあります。

窓拭きや鏡拭きに、新聞紙を水に浸けしぼって利用すると、インク成分が汚れを落としツヤが出ます。新聞紙には防湿防臭効果もあるようで、掃除をしたあとの下駄箱やタンスなどに敷いておくのもおすすめです。

米のとぎ汁で床を拭けば、含まれた油分の効果でピカピカになります。油汚れを落とす効果もあるようですが、コンロや換気扇などの汚れは重曹を使うと良いとか。

こうした暮らしの知恵は、子供の頃、家族の行事であった大掃除で、祖父母や両親から教えてもらいました。またある年はこんな話を聞きました。

明治のころ、弊寺には七、八人の小僧さんがおり、一番下に小学校二年生で小僧になった子がいました。毎朝、お寺の広い板の間や長い廊下の雑巾がけをしてから学校へ行っていたようです。しかし兄弟子から「そんな拭き方ではだめだ。雑巾をよく洗って、しっかりしぼってから拭くのだ」といつも叱られ、泣きながら拭き直しをして、学校には遅刻ばかりしていたそうです。

あるとき和尚さんに声をかけられ、訳を話すと、「そうか、雑巾をかけるということは、自分が雑巾になって他をきれいにすることだよ。汚れた雑巾で掃除をしてもきれいにならないように、きれいな心で汚れているところを掃除することがお坊さんの仕事だよ」と言われたそうです。

子供のときに聞いたこの話、雑巾がけをするたびに思い出します。家庭での年中行事の中に、日本人としての心が伝えられているのですね。

 

 

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