『お正月とだるま』 〜だるまに願いを込めて〜

もういくつねるとお正月〜♪

一年の終わりが近づいて来ましたね。年末年始の風習をめぐる由来やいわれを知ることは、新たな年を晴れやかな気持ちで迎える準備となります。今回は「だるま」について。

 

お正月になると、丸い体とヒゲをたくわえた凛々しい表情の「だるま」が、初詣などいろいろな場所で売られていたり飾られています。

この「だるま」は大願成就の縁起物としても親しまれ、願掛けしながら片方の目を入れ、願いが叶ったらもう一つの目を入れることでも知られています。

この張り子でできた伝統工芸品の「だるま」は、今から千五百年前の中国で作られた「不倒翁(ふとうおう)」という重りの入った人形が、ルーツといわれています。

不倒翁は室町時代に日本に伝わり、「起き上がり小法師」の名で親しまれました。江戸時代になり、これに禅宗の祖、達磨大師の顔を描いたのが「だるま」のはじまりになります。

達磨大師は四世紀末、南インド香至国の第三王子として誕生しました。お釈迦さま代々の法を受け継がれ、悟りのこころを伝えようと南海経由で中国梁の武帝のところに来られました。

伝統工芸品の「だるま」は、全体が丸く手足のない姿が特徴です。これは達磨大師が嵩山の少林寺にいたとき、岩壁に向かって九年間も坐禅を続け、手足がなくなってしまったという伝説からその姿を模したものです。

達磨大師の不屈の精神と、何度転んでも起き上がる「起き上がり小法師」、そして「七転び八起き」ということわざが結び付き、いつしか「だるま」は願いを叶えてくれる縁起物として、人々の暮らしに定着していきました。

言い伝えでは百五十歳で没するまで仏教の教えを広めたとされます。これは史実ではないと思いますが、しかし『二入四行論(ににゅうしぎょうろん』の教えは長きにわたり悩める人々の心の支えになりました。

二入とは「理入」と「行入」のことで、理入は教え(理)を信じること。お釈迦さまの教えである経典をしっかりと学び、清浄な心を努める修行です。もう一つの行入は実践(行)していくことですが、悟りに向かって行動することで、四項目あって※四行(報怨行・隨縁行・無所求行・称法行)といいます。

 

※四行
報怨行(ほうおんぎょう)現在の苦しみは過去の怨みや憎しみの結果であると忍受するという行。
隨縁行(ずいえんぎょう)現在の自分の在り方や人生の苦楽は因縁によるとさとり、因縁にしたがって生きて動じないという行。
無所求行(むしょぐぎょう)一切の真理は本来空であることを見定め、外に向かって欲しがることをやめて執着のこころを捨てるという行。
称法行(しょうぼうぎょう)人間は本来清浄であることを悟って、六波羅蜜(仏教徒が実践すべき六項目で、布施、持戒、忍辱、精進、禅定、知恵のこと)を実践するという行。

 

工芸品の「だるま」が目を入れない状態で売られているのは、買った人が願い事をしながら自分で目を入れるためです。「願掛け」の「願(がん)」と、目の「眼(がん)」を掛けているともいわれます。

江戸時代に、視力が低下してしまう「疱瘡ほうそう(天然痘てんねんとう)」という伝染病が流行し、人々は黒々とした大きな目の「だるま」を求めました。そのうちに「自分で目を入れたい」というお客さんが増え、目を入れない「だるま」が売られるようになったというのが、目入れの風習の始まりとされます。

年末年始は新しい年の始まりであります。

心を新たに、願いや目標を定め、不屈の精神で禅の教えを広めた達磨大師のように、一生懸命に精進したいと思います。

 

 

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