ちりん。ちり-ん。この爽やかな音色を奏でるのは夏の風物詩『風鈴』。軒下に吊るしているお宅もあるのではないでしょうか。
風鈴の起源は中国唐の時代に占いで使われた風鐸(ふうたく)という道具がもとのようです。竹林に風鐸を吊るし音の鳴り方によって吉凶を占うというものでした。
日本では奈良時代に遣唐使によって風鐸が伝えられました。お寺の屋根の四隅に風鐸を吊るし、その音が聴こえる範囲を聖域としたそうです。この時代、風鐸は魔除けとして使われました。
平安時代になると貴族たちも風鐸を使い始め、現代と同じ「風鈴」と呼ばれるようになりました。
現在は、郷土品として親しまれています。型を使わない製法で作られる江戸風鈴や鉄で作られた南部風鈴、真鍮で作られた高岡風鈴など、デザインや音色は様々ですが基本的な仕組みは同じです。
「外見(そとみ)」と呼ばれる本体と、「舌(ぜつ)」と呼ばれる紐(ひも)に繋がる小さな部品、そして風を受ける「短冊(たんざく)」の三つです。短冊が風を受けて紐を揺らし、紐に付いた舌が外見の縁に当たり音が鳴るという仕組みです。
私が預かるお寺の中庭に古い南部鉄器でできた風鐸風デザインの風鈴がありますが、短冊が切れた状態で何年も放置されていました。
暑くなってきたので直して使おうと思い、手にとって確認したところ吊るし紐も劣化していたので交換し、新しい短冊を付けて元の位置に吊るしましたが、何故か鳴らないのです。
いや、強い風が吹けば鳴るには鳴るのですが、「ちん」と一回だけ。風の強さと音が合っていないのです。
そこで調べてみると、風鈴の三つの部品が適正な位置でないと、せっかく風を受けてもいい音色は鳴らないようなのです。
初めに失敗した原因は、短冊の紐がまた切れないようにと「舌」と「短冊」を針金紐で直接結んだことでした。それで次は、風に素直に反応するようにと「舌」と「短冊」を離し、紐も針金紐からタコ糸に替えました。しかし今度はチリンとも鳴りません。
どうしたものかと観察すると、風が吹けば、風を受けた短冊は揺れはするものの、回転するばかり。「舌」と「短冊」の距離が長すぎて、短冊は自由に動くものの風を逃してしまい「舌」まで振幅(しんぷく)しないのです。
結ぶ位置を詰めたら音が出だし、さらに「舌」の位置を風鈴本体の縁(ふち)ギリギリに微調整したところ、風鈴は短冊を踊るようになびかせ、爽やかな音色を発しました。
「ちりーん。ちりりり・りーん。」
「無念の念を念として、謡(うた)うも舞うも法(のり)の声」 (『白隠禅師坐禅和讃』)。
調(ととの)えられた風鈴が風のご縁によって発した爽やかな音色。
仏さまに抱かれるように、その響きはやさしく私を包むのでした。
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