~新しい年の心構え~
新年を迎える際、清々しく満ちた気分で迎えたいと思うのはみな同じ思いではないでしょうか。
新年をとても重要とする伝統の行事や風習が数多くありますし、また受け継がれています。
「書き初め」もその一つで「初めの一歩を大切にする」という心は、現代でも大切な正月行事の要となっています。そんな書き初めの由来は、昔からあったしきたりと関係しているようです。
書き初めは正月の二日目に行うといわれますが、この日は古くから仕事始めの日とされ、農家は畑や山の神を祀り仕事の準備を始め、商家は初荷を出していました。
一年の事始めには、その年の心構えや抱負などを書いて心に刻み込み、精進するとうまくいくと言われることが広まったようです。
明治時代になると学校教育の一環として書道が必修科目となり、書き初めが盛んになって新年の抱負や目標をしたためるものとして重視されました。
もともとは、平安時代に宮中の文人の行事で「吉書」や「筆始」ともいわれ、若水(元旦の朝に初めて汲んだ水。邪気を払うといわれる)で墨をすって、恵方に向かっておめでたい言葉や詩歌を書くという行事から始まっています。
3300年前に文字を創造した中国では、言葉の記録・意志の伝達のために文字が考えられたのではなく、一字一字が人間に幸せをもたらし、また災いをもたらす神や妖鬼のような畏敬の念として言霊思想からその祈りの形を表したのが始まりでした。
それに祭儀や、生活のための占いをして神の啓示を受けたことなどから、中国人の思想の根底には今でも文学を神聖視する思想が受け継がれています。
文字の書かれた反故(書き損じたもの)は踏まない、文字を書いた紙は不浄の場所に使用しないというような習慣も残っています。
どんど焼きでお焚き上げするのも天に届くようにとの祈りに通じるのでしょう。
一年の初めに、清らかな気持ちで新年の抱負を書き初めに書いてみてはいかがでしょうか。
書き初めの句は吉祥の言葉に限らないし、その人のその新年にかける志や目標とか、願いの言葉、座右の銘などあれば挑戦してみてください。迷っている方にはこちらの言葉はいかがでしょうか。
『小水魚有楽(小水の魚に楽しみ有り)』(妙心第二世微妙大師)
水は時間、魚は人のたとえです。
限られた人生の時間は、水が蒸発するようにどんどんと少なくなっていきます。
その時間の中でやれることをやっていこう。目を閉じないで魚のように見開いて精進していこう。
という私たちに向けられた叱咤激励のお言葉です。
この言葉を墨痕鮮やかにしたためることで、新しい年を迎える心構えになることでしょう。
参考:
くらしの歳時記
白川静博士の漢字の世界へ
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